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第33話 ハッピバースディマーガレット

last update Last Updated: 2025-06-10 21:00:59

 それから数週間後……。

 早朝の晴天の最中、小さな小さな友達が私の花屋に遊びに来ていた。

 遊びに来たというか、実は私が招いたのだけどね。

 その理由は……。

「ハッピーバースデーツゥユー! マーガレット10歳の誕生日おめでとう!」

 私とクロウの小気味よい拍手音がテラス周辺に響き渡る。

 そう、今日はマーガレットの誕生日だったのだ。

 それで外のテラスにテーブルなどを持ってきて、皆でわいわい騒いでいる最中だったりする。

 ちなみにメンバーは私にクロウ、マーガレットに子羊のモコである。

「えへへ……。みんなありがとう!」 

 テーブルの上に乗った生クリームいっぱいのホールケーキ。

 その上には10本のローソクが火を灯し、揺らめいている……。

「じゃ、消すね! ふーっ!」

 が、ローソクの本数が多いからか、ローソクの炎はなかなか消えない。

「メ、メエエ!」

 しまいにはモコが気を使って息をかけてしで、なんとも微笑ましい。

「頑張って! ほら、あと1本よ!」

  私とクロウはその様子を笑顔で見守りながら、紅茶などの用意をすませていく。

「き、消えたー!」

「メ、メエエ!」

 はい、ということで、私達はローソクを除いたそれを切り分け美味しく食べていきますよっと。

「わあ、このケーキいちごが沢山入っていて美味しい!」

「ふふ、それはね、イッカ国の特産品であるイチゴを使ったケーキだからよ」

「わあ、すごーい!」

 マーガレットは口元に生クリームまみれにしながらも満面の笑みを浮かべている。

(うん! マーガレットも喜んでくれているし、買ってきて正解だったね)

 私は紅茶を美味しく飲みながら、ウンウンと頷く。

「あ、マーガレット、はいこれ!」

「え? なになに?」

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